「古典語・古典学系」カテゴリーアーカイブ

古典語でのニュースクリップ

せっかくEvernoteを使い始めたので、やっぱりクリップしない手はない(笑)。久々に覗いた古典語でのニュース報道ページ。ずいぶん前に見たきりだったので、urlも若干変わっていた。ラテン語のほうは読み上げ音声も聞ける。

ギリシア語の別資料は一応、Evernoteで検索できるみたい……と思ったら、現代ギリシア語で認識しているのか(?)、古典ギリシア語のアクセント文字にちゃんとヒットしないみたい。上のAkropolisの画像にいたっては、ギリシア文字での検索はうまくいかず、普通のアルファベット入力に反応するのだけれど、ちゃんと検索できていない。どう認識しているのかちょっと謎(苦笑)。少し残念だが、でもまあクリップそのものは有益なのでよしとしよう……。

「ソフィスト」絡み

シンプリキオスの注解書は大まかに、アリストテレスを新プラトン主義に引き付けて論じたものというふうに位置づけられているけれど、どこがどうプラトン主義化しているのかというまとまった細かな話は案外見あたらないような気がしていた。そんなこともあって、ちょっと取り寄せてみたのが、マルク=アントワーヌ・ガヴレ『<ソピステース>読者としてのシンプリキオス』(Marc-Antoine Gavray, “Simplicius lecteur du Sophiste”, Klincksieck, Belge, 2007)。ベルギーの版元っすね。シンプリキオスのアリストテレス注解書に、意外に多く言及・引用されているのが、プラトンの『ソピステース(ソフィスト)』なのだといい、その引用箇所を文献学的に拾い上げて検討するというのが同書の基本的な趣旨。『範疇論注解』『自然学注解』『霊魂論注解』などを順に取り上げている。文献学的なアプローチなので、思想内容へはそれほど深く踏み込んでいるわけではないようだけれど、それでも取っかかりとしては面白いかも。論考部分は100ページほどで、後半は引用箇所を希仏対訳で載せている。個人的にはこの対訳部分のほうに惹かれるのだが……(笑)

『ソピステース』はそういえば以前にLoeb版で読んだはずなのだけれど、今振り返ると、中程くらいのところに『パルメニデース』を補完するような存在と非在の話が出てきたなあというくらいで、すっかり忘れてしまっている(苦笑)。プラトンの著作の中では意外に重要なのだというし、そのうちちゃんと再読しないと……(笑)。

エウパリノス・プラス?

少し前に高橋さんから、写本を読むための演習用テキストというのを頂戴したのだけれど(改めて感謝)、その際に写本で多用される省略文字の辞書というのをご紹介いただいた。これ、Web版もあるということなのだけれど、個人的には冊子の方が断然良い気がする。『ラテン語・イタリア語の省略記号辞典』(“Dizionario di Abbreviature latine ed italiane”, Andriano Cappelli, Ulrico Hoepli Editore, 1990-2006)というもの。この辞書、パラパラめくるだけでも結構楽しい(笑)。いろんな省略形があるのだなあ、と改めて感心する。おそらくは当時の速記上の工夫の数々なので、そのあたりに思いを馳せながらただ眺めているだけでも、妙に感動的な気さえしてくる。初期印刷本はともかく、それ以前の写本となるとなかなか実際に目にする機会がないし、あってもなかなか読めないのだけれど(暗号解読に近くなってしまうので)、こういう辞書を見ると、むしろ解読よりも写本作りをやってみたくなってくる(笑)。こうした省略形は、現実の筆記作業において練り上げられた工夫もしくはお約束だろうから、習得する場合も実際に書いてみる・作ってみるのがよいのではないか、とも思う次第。個人的に、古典ギリシア語、ラテン語の偽書を作るというエウパリノス・プロジェクトを進めようとしているのだけれど(今はまだ下準備段階)、テキストレベルで終わらずに、実際に羊皮紙を製本して筆記するところまで行けないものだろうかと改めて夢想してみたりする(笑)。どうせならペンやインクも当時のものを復元して……とかね。うんうん、それでこそ本物の偽書(形容矛盾だけれど)だよなあ。テキストをさらに一段先に進めるということで、題して「プロジェクト・エウパリノス・プラス」?

希語作文

まだ忙しい状態が続いていて、なかなか通常の読書とかに戻れない……(苦笑)。そんな中、昨年秋からやり直していたギリシア語作文練習の教科書、ノース&ヒラードの『ギリシア語作文』(North & Hillard, “Greek Prose Composition”, Duckworth 2003)の背がついに痛んでページが少し脱落。うーん、結構酷使していたからなあ。この教科書は短文練習が充実しているので、 ほかよりも個人的には気に入っている。でも、ある意味似たような練習問題が繰り返されるので、ちょっと内容的に飽きてしまうきらいも……(苦笑)。ま、もともとパブリックスクールあたりの教科書らしいけれど、なんだか受験勉強を思い起こさせる感じ……。やはり次はもうちょっと創造的な希訳練習ができるものがよいかもなあ。うーん、まだ先は長い>エウパリノス・プロジェクト。

聖書学

新潮社が出している季刊誌『考える人』2010年春号を書店で見かける。ちょうど復活祭だからというわけでもないのだけれど(今年は東方教会も同じ日なんですね)、特集が「はじめて読む聖書」で、とりわけ聖書学者の田川建三氏のインタビューに惹かれて購入。田川氏というと、個人的には以前読んだ大部の『書物としての聖書』(勁草書房、1997)が結構記憶に残っている。今回のインタビューは同氏の研究者としての軌跡がかなり詳しく述べられている。とりわけザイール大学への赴任のくだりが印象的。帝国主義というものを肌で感じ、それによってヘレニズム世界がどういうものだったかという推察につながったというあたりが鮮烈だ。世界的なスケールと反骨精神をもった聖書研究者としての素顔の一端が垣間見える。すばらしい。氏の最近の著書も読んでみることにしよう。