「古典語・古典学系」カテゴリーアーカイブ

辞書ツールも一新

マシンが新しくなったので、いろいろな言語まわりのツール類も一新しているところ。OSはデフォルトで入っていたのがLeopardなので(Snow LeopardはDVDが同梱されている)それほど大きな変化はなく、とりあえずギリシア語入力に使っているMac UIM(入っているバージョンは0.5.2)もそのまま引き継がれたし(でも新しいバージョンはすでに0.6.5とかになっているので、そのうち更新するかも)、Diogenesなども問題なく動いている。ただ、せっかくなので、MacのEPWING辞書検索ツールとして名高かったJammingに代わり、その後継となったLogophileを試してみているところ。画面はWindows界隈のEBWinやEBPocketに似た感じ。Jammingではもっさりしていたランダムハウスの辞書ファイルがさくさく動くようになっていたので個人的には好印象。

で、そのタイミングでお知らせを頂いたのだけれど(ありがとうございます)、あのEPWING for the classicsの羅英・希英EPWING辞書が更新されている。これは嬉しい。さっそくLogophileにも載せてみているところ。iPod TouchのEBPoketにも入れ直さなくては。

アクセント振り

古典ギリシア語作文の練習も相変わらず「基本巡り」を繰り返しているけれど(苦笑)、やはりどうもアクセンチュエイション(アクセント振り)がいまひとつ弱い。というわけで、ちょっとそれに特化した本をゲットしてみた。フィロメン・プロバート『新・古典ギリシア語アクセント簡略ガイド』Philomen Probert, “A New Short Guide to the Accentuation of Ancient Greek”, Bristol Classical Press, 2003)というもの。アクセント体系の概説に、セクションごとの練習問題が付いた結構良さそうなテキスト。この練習問題が単純ながら豊富な点が大きな利点かしら。まだ見始めた程度だけれど、概説はひたすら淡々と記述されていて、歴史的・形態論的になぜそうなっているのか、みたいな説明はあまりない。ま、それはもっと大きな文法書で学んでくれということのようだけれど。とにかく同書はひたすらアクセントの話だけ、というのが、ある意味とても好ましい(笑)。とりあえず、取っかかりとしては悪くないかな、と(?)。

シンプリキオス

エピクテトスの『手引きの書』(ἑγχειρίδιον)へのシンプリキオスの注解書を一般向けに論じたイルセトロ&ピエール・アドの『古代における哲学の修得』(Ilsetraut & Pierre Hadot, “Apprendre à philosopher dans l’Antiquité”, livre de poche, Librairie Générale Française, 2004)を、だいぶ前に一度読んだシンプリキオス『エピクテトス「手引きの書」注解』の希仏対訳本(第一巻)( “Commentaire sur le Manuel d’Epictète”, tome I, trad. I. Hadot, Les Belles Lettres, 2003)を引っ張り出しながら、眺めているところ。これ、基本的に中庸の倫理をひたすら説いているような印象だけ妙に残っているのだけれど(笑)、今改めて見てみると、細かいところがいろいろ面白い。アド夫妻本が導きの糸になってくれているからかしら?

エピクテトスのもとの書は、弟子のアリアノスが師の講義を編纂した2つの書のうちの1つ。アドによれば、1世紀以降の教育形態は、それ以前の討論形式に代わり文書の説明が主になっていたとのことで、それに質疑応答(対話)が続くのが普通だったといい、アリアノスが編纂したのはその対話部分らしい。師の教えをおそらくは凝縮して伝えることが執筆目的だったのだろうという。で、時代がだいぶ下ってからのシンプリキオスの注解は、その執筆自体がすでにして一種の瞑想の修練だった可能性があるという。序文などは後期の新プラトン主義陣営の注解書の形式を踏襲しつつ、モラル的な面ではストア派と逍遙学派、プラトン主義のいわば折衷的なスタンスを取っているというわけで、うーん、なんだかそれは非物質界と物質界との「中庸」域をめぐる考察とでもいう感じ。実際、プラトン主義的には、エピクテトスの『手引きの書』は、非物質界の認識へと高まるための初級・中級段階(手引き書の内容もまた二部に分かれる)、ただし高みを目指すなら必須の課程という位置づけなのだという。なるほど、このあたりは漫然とテキストを見ていてもなかなか思い至らないところ(苦笑)。

iPod Touchで古典が読みたい(4)

この間取り上げた、古典ギリシア語辞書Lexiphanesがなかなか便利なので、同じ作者でほかが出ていないかと思っていたら、あれま、ラテン語辞書も出ているのでないの。Lexidium Latin Dictionaryというのがそれ(→Lexidium Latin Dictionary)。これも前のLatin Dictionaryと同様、パブリックドメインのLewis & Shortがベース。というか超有名(というか定番)な古典語文献サイトPerseus Digital Libraryのデータをもとにしているようだ。で、このLexidiumもLexiphanesと同様、インクリメンタルサーチの段階で出るワードリストに、すでに小さく一般的な意味が表示されるのが便利。また、そのワードリストの段階で、長短記号も付いている(前のLatin Dictionaryでは、ワードリストからさらに本文表示に進まないと、長短記号は表示されない)。このあたりがやはり後発の強み。うん、なかなか便利そう。現時点ではやはり230円なり。

iPod Touchで古典が読みたい(3)

久々にiTunes Storeのアプリストアを見ていたら、古典ギリシア語の新しい辞書が掲載されていた!Lexiphanes Greek Dictionaryというもの(こちら→Lexiphanes Greek Dictionary)。iPhone OS 3.0用(iPod Touchも要アップグレード)で、230円。こちらも前のGreek English Lexicon同様、1924年版のLiddle & Scottがベースなのだけれど、後発の強みで、表示のレイアウトがとても見やすくなっている。また、検索語の下に一般的な意味がちょろっと出ているのもとても気が利いていて便利。また、これはAutenrieth’s Homeric Lexicon(1889)も併せて収録しているので、アッティカ方言ばかりかホメロスのイオニア方言とかにも対応。この2冊でのクロス検索はできないものの、検索語を打ち込んでから切り替えることはできる。iPhone 3.0から現代ギリシア語のキーボード配列が入ったので、それをオンにしておいて切り替えて入力することもできるのだけれど、なぜか個人的にそれをやると微妙に検索精度が落ちる(これは謎だ……バグかしら?)。そんなわけでとりあえずは普通の西欧キーボードから検索している(いわゆるBeta Code入力)。うん、でも全体としては結構お薦め。