ピロポノスの場所論(『自然学注解』の一部)と、その反・世界永続論に対するシンプリキオスの反論(こちらも『自然学』の一部)を英訳でまとめた一冊『場所、真空、永続性』(“Place, void and eternity”, trans. D. Furley, C. Wildberg, Cornel University Press, 1991)を古書店で結構安く手に入れた。どちらもガリカから落としてきた希語テキストも手元にあるのだけれど、注とかいろいろ参考になりそうなので英訳も持っておこうかなと思った次第。とりあえず、シンプリキオスの反論から読み始める。ピロポノスの議論を要約(あるいは引用)した上でみずからの反論を綴っていくというスタイルで、結果的にピロポノスの議論の大枠がかなり明確に浮かび上がる。とくに「反アリストテレス論」を盛んに引いているのでとても参考になる。
これも昨年末ごろから少しづつ目を通していたものだけれど、Bompianiの対訳本シリーズで昨年出たポルピュリオスの『反キリスト教論』(Porfirio, “Contro i cristiani”, trad. Giuseppe Muscolino, Bompiani, 2009)。どういう異論をぶつけるのかと思っていたら、直情的とも言える身も蓋もない反論の数々だった(苦笑)。ま、むしろそれだけに、ある意味面白くもあるのだけれど。ポルピュリオスのこの反キリスト教論は文書として残っているものではなく、例によって証言の数々を収集したもの。ドイツのプロテスタントの神学者だったアドルフ・フォン・ハルナックが10年ほどを要してまとめあげ、1916年に刊行した断片集がそれ。今回の対訳本は、ギリシア語部分のみならず、そのドイツ語序文ほかも含めて伊語に全訳したというもの。
昨年末からちびちびと読んでいるピロポノス『世界の永遠について』(『反プロクロス』)。基本的にはプロクロスのもとの議論に対してピロポノスが反論を加える形なのだけれど、プロクロスの議論は18あるとされている。で、Brepols刊の2巻本の第二巻は5つの議論(5章分)しか収録されていない。これ、残りは続刊ということになるのかしら。収録分は、原因(デミウルゴス)と結果(世界)とは等質ではない(永遠であるならば等質でなければならないというのが前提?)と強調する第1章、プラトン的なイデアの永続性を論拠にすることへの反論をなす第2章、現勢態・可能態の違いを説明する第3章、現勢化と運動について詳述する第4章(今ここの途中)と続いているのだけれど、個人的に関心のある質料形相論的な話は当面出てきそうにない(笑)。で、そんな中、ピロポノス関連の書籍にそのあたりの話を取り上げたものがあると聞き、Google Booksで覗いてみる。デ・ハース『ピロポノスによる第一質料の新定義』(Frans A. J. de Haas, “John Philoponus’ New Definition of Prime Matter: Aspects of Its Background in Neoplatonism and the Ancient Commentary Tradition”, Brill, 1997)というもの。