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ポルフュリオスによる『テトラビブロス』入門編

Mathematikós. Testo greco a fronteイタリアのBompianiからの希伊対訳本で、ポルフィリオ『プトレマイオスの天文学書入門』(伊語タイトルは「マテマティコス」になっている:Mathematikós. Testo greco a fronte, a cura di Giuseppe Muscolino, Bompiani, 2017)にざっと眼を通してみた。プトレマイオスの『テトラビブロス』の主に第一巻を中心としたコメンタリーで、天文学・占星術の基本事項の概説書。過去の文献学的研究によりポルフュリオスの著書とされているもので、3世紀後半ごろに書かれたものだという(解説序文による)。『テトラビブロス』は、古来の天文学に対して新しい計算方法などを用いたある種画期的な書とされていたようなのだが、ポルフュリオスもそれを踏まえて、いくつかの箇所で古い学知とその新しい知見とを対比させたりしている。また、もう一つの特徴点として、星座の位置関係などの概要のほか、ポルフュリオスは基本的に惑星などが地上に及ぼすとされる影響について大きな関心を寄せていたようで、それぞれの星に属性として指定される地上のものとの対応関係などが総覧的に示されている。

少しメモ的に。たとえば医学占星術的なところでは、白羊宮が頭、金牛宮が腱と首、双児宮が肩・上腕と腕、巨蟹宮が胸と肋骨、獅子宮が横隔膜と胃と腸、処女宮が腹腔部や子宮、天秤宮が腎臓と臀部、天蝎宮が生殖器・陰部、人馬宮が鼠径部、磨羯宮が腰部・臀部、宝瓶宮が脛骨と踝、双魚宮が足にそれぞれ対応するとされる(44章)。また、主要な星が支配する部位・症状も定められている(45章)。たとえば土星は炎症・粘液・気管支などを支配し、木星は肝臓のほか消化器や胃の神経系、火星は血液や腎臓、精液など、金星は肺や胆汁、水星は聴覚、動脈、舌から咽喉などを支配する。さらに太陽は心臓と呼吸器系、運動の感覚、視覚、男性の右側と女性の左側(!)を司る。月は地表に最も近いがゆえに、土に関係したもの、つまりは身体全般、その組成、さらには母親や女性などを支配するとされる。それぞれの星の配置がまた相互に影響を及ぼし、複合的なかたちで様々な効果をもたらすとされる。そうしたアトリビューションの理由付け、説明はあまり詳しく記されてはいないようだが、まだざっと眼を通しただけなので、そのあたりも含め、もとの『テトラビブロス』と突き合わせて詳しく読んでみるのも一興かもしれない。