産業革命は中世にあり

思うところあって、ジャン・ジャンペル『中世の産業革命』(Jean Gimpel, “La révolution industrielle du Moyen Age”, Points – Editoins de Seuil, 1975-2002)を読み始める。邦訳は残念ながらとっくに入手不可。復刊ドットコムにリクエストが出ているみたいだ。この著者の名前の表記も二転三転しているみたいで、ギャンペル、ジンペル、ジャンペル、ギンペルなどいろいろ(笑)。実際にどう読むのか知りたいところだけれど(仏版wikipediaのエントリとか見ると、有名な画商一家の末っ子とか)、とりあえずここでは仏語的な読み方でお茶を濁しておこう(苦笑)。まだ最初の三章のみ。最初の章は水車の歴史。水力利用という点でも注目できるほか、水車の設置・メンテナンス事業が労働と資本の分離の嚆矢になったなんて話もあって(14世紀)、なかなか読ませてくれる。地元住民の反対運動なども、水車をめぐって起きているという(同じく14世紀)。なかなかにして近代的でないの(笑)。人力に代わる機械化の導入・普及には、シトー会の組織力が大いに関与しているという話も。

第二章は鉱物資源の話。英国のウィンチェスター城とかウェストミンスター寺院などの建造に使われる石が、フランス北西部のカーンから切り出され運ばれていたなんて知らんかったなあ。冶金と農業革命の関係なども端的に整理されている。で、第三章はその農業革命ということで、馬の利用(馬具の改良がなされて可能になった)や三輪作の考案、羊毛産業、食料生産の内訳などの話が続く。羊毛の輸出や醸造酒の製造でシトー会が果たした役割も強調されている。総じて具体的でヴィヴィッドな描写が多くて読みやすい感じ。それにしてもやはり、目立っているのはシトー会の動きかしら。ウォルター・オブ・ヘンリーという農学関係の文書を数多く残した人物が何度も言及されているが、これなども興味を湧かせてくれる。

「産業革命は中世にあり」への1件のフィードバック

  1. 毎回の興味深い記事、ありがとうございます。Je ne connaissais pas Jean Gimpel.今度時間があったら読んで見ます。

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