年越しDVD:パーセル「アーサー王」

今年の年越しDVDは、エルヴェ・ニケ率いるル・コンセール・スピリチュエルのパーセル『アーサー王』(H.Purcell: King Arthur / Herve Niquet, Le Concert Spirituel, etc。これはまさに新年の初笑いにぴったり。パーセルのセミオペラをエルヴェ・ニケが脚色し、なんと幕間ではみずから歌ったり踊ったりの大爆笑(!)。モンペリエのオペラ座で2009年3月に収録されたもの。初めのうちは「こんなんでいいのかしら」なんて気もしないでもないが、とにかく演じているほうも観ているほうもむちゃくちゃ楽しいので、そういうことは途中からどうでもよくなってくる(笑)。演出もフランスのコメディアン、シャーリー&ディノによるものとか。舞台はキッチュというかパスティッシュというか。確かにパーセルの『アーサー王』はもともと話に起伏に乏しい歌劇(オペラ・コミック)だけれど、こういう形で盛り上げるというのは正直なところかなり斬新かも。舞台上で実際にものを食べながらの合唱とか、まさに前代未聞。ニケ本人の役者ぶりも堂に入っているし、これは年明けからいいものを観せてもらったなあ、と。

パーセルの『アーサー王』というと、78年の映画『モリエール』(監督はムヌーシュキン)の壮絶なラストで用いられた曲とかの印象が強く、どうもその映画のイメージのせいもあってか、かなり重苦しい印象をもってしまっていたのだけれど、今回の舞台ではそういう堅苦しいイメージも吹き飛んでしまった。そういえば2月にはこのメンツで「アーサー王」の来日公演が神奈川であるらしいけれど、幕間のやりとりとか日本語でやるのかしら?