雑感:質料の限定

昨年末からちびちびと読んでいるピロポノス『世界の永遠について』(『反プロクロス』)。基本的にはプロクロスのもとの議論に対してピロポノスが反論を加える形なのだけれど、プロクロスの議論は18あるとされている。で、Brepols刊の2巻本の第二巻は5つの議論(5章分)しか収録されていない。これ、残りは続刊ということになるのかしら。収録分は、原因(デミウルゴス)と結果(世界)とは等質ではない(永遠であるならば等質でなければならないというのが前提?)と強調する第1章、プラトン的なイデアの永続性を論拠にすることへの反論をなす第2章、現勢態・可能態の違いを説明する第3章、現勢化と運動について詳述する第4章(今ここの途中)と続いているのだけれど、個人的に関心のある質料形相論的な話は当面出てきそうにない(笑)。で、そんな中、ピロポノス関連の書籍にそのあたりの話を取り上げたものがあると聞き、Google Booksで覗いてみる。デ・ハース『ピロポノスによる第一質料の新定義』(Frans A. J. de Haas, “John Philoponus’ New Definition of Prime Matter: Aspects of Its Background in Neoplatonism and the Ancient Commentary Tradition”, Brill, 1997)というもの。

さしあたっては購入しないけれど(苦笑)、Googleの内容見本表示をざっと読んでみると、なにやらピロポノスは第一質料に三次元的限定を導き入れている、みたいな話のよう。ほとんどこれ、『反プロクロス』の11章の内容の詳述という感じなので、ちょっと原文のほうを見ないと何とも言えないけれど、もしそういう話だととすると、これってトマスが個体化論で述べていた(ちょっと前のメルマガで出てきた)、次元として指定された(限定された)質料という考え方の「源流」のような印象も受ける。もちろんトマスがピロポノスを読んでいたなんていう文献学的な話ではなくて(それはちょっとありそうにない)、トマスのテキストが醸すある種のわかりにくさを、ピロポノスあたりを併読することによって和らげられないかとか、あるいはまた、キリスト教の側からのアリストテレス解釈のある種の「型」が浮き彫りにならないかとか、そんなことを思っているわけだけれど。

「雑感:質料の限定」への2件のフィードバック

  1. >ピロポノスは第一質料に三次元的限定を導き入れている

    これは、おそらくアヴェロエスなどにおいても持続している見解だと思います。実態的形相を受け入れる前の(第一)質料が、完全に無定形なのではなく、三次元の限定を既に受け入れている必要があると考えられていたのだと思います。質料と三次元については、Brepols から出ている Quaestio という論集的ジャーナルの 2007 が「質料」特集で、その中に S. Donati, “Materia e dimensioni tra XIII e XIV secolo: la dottrina delle dimensiones indeterminatae” という論文があり、有益です。

  2. 情報をありがとうございます。そのジャーナル、面白そうですね。

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