各論の時代に……

昨晩はレジス・ドゥブレの講演会へ(@日仏会館)。前回のメディオロジー会議が2002年くらいだったので、8年ぶりか。「境界は何の役に立つか」という今回の講演は、分割や囲い込みなどで悪しく言われることの多い「境界」について、実は境界がないほうが全体的なフラット化・閉塞を招くとし、境界は再び(別様に)評価されなくてはいけないとする内容。分割される両側が相互に認知され可視化される境界を理想として提唱していた。つまりは「bon usage de la frontière(国境の正しい用い方)」みたいな感じ。相変わらずのドゥブレ節で、たとえば細胞膜と国境などを一緒くたにして考えるなどの、奔放な物言いと比喩・レトリックを多用するスタイル。だけれど、境界を残しつつ、相互承認や交流を勧めるという主旨だけ見ると、あまり目新しい論点でもないような……(笑)。それに、こういうステップバックした大局的な視点・物言いは、なるほど知識人的なスタンスとしては今も生きてはいるのだろうけれど、昨今では昔ほどニーズを喚起していない印象も残る。実際、質疑応答で出てくるのはアフリカの国境画定の問題など具体的な話。今求められているのはむしろそういう細やかな各論なのだなと改めて思う。今回の講演会、聴衆の平均年齢も昔より高くなっている印象もあり(若い人たちがあんまりいない)、なにか時代の空気の様変わりを如実に感じさせる。