「グノーシス主義の思想」

これは少し前にどこぞで話題になっていたと思うのだけれど、大田俊寛『グノーシス主義の思想 – <父>というフィクション』(春秋社、2009)を読み始める。まだ2章目までだけれど、これ、ぐいぐいと引き込む力をもった、なんとも鮮やかな整理が滅法印象的。こんなりすっきり整理されてよいのかしら、と思えるほど。なにやらチャートっぽい感じとか、かつての『構造と力』を思い起こさせたりもするかも、なんて(笑)(古代思想が対象なので文脈などはかなり違うけれど)。いやいや皮肉っているのではありません。世間に出回っているグノーシスについての多くの言説を、ロマン主義的バイアスがかかったままだとして一蹴し、そこから具体的なテキストに即してその思想の核心を取り出していこうとする姿勢には共感を覚えるし、それを「父」の探求という人類学的な視座からアプローチしているところも、スケールを感じさせるものがあるし。これは次回作も期待できそうな予感……って、先走りたくもなる(まずは後半も読み通してからだけれど)。