医学占星術

イタリアのSISMELが出しているミクロログスライブラリから、『星辰・医学 – 占星術と医学の東西』(”Astro-Medicine – Astrology amd Medicine, East and West”, ed. Charles Burnett and al., Edizioni del Galluzzo, 2008)というのを取り寄せてみる。東西というだけあって、ヘブライやアラビアのほか、インド、チベットの仏教系の「医学占星術」までと、面白そうな論考が並んでいる。西欧はルネサンス以降かと思いきや、中世関連ものも。そんなわけで、まずはヴィヴィアン・ナットンという人の「ギリシアの医療占星術と医学の境界」という一編を読む。これ、基本的にはガレノスの占星術批判を丹念に見直すというもの。ルネサンス期に「再発見」されるまで、西洋では医学占星術は「忘れられ」ていて、人体に影響するのは星辰ではなくむしろ気象現象だというガレノス説が支持されていたということなのだけれど、ガレノス自身はそうした気象現象と星辰との依存関係などを認めていたりして、批判する側(ガレノスを継ぐ医師たち)も、巷でもてはやされていた占星術から案外そう遠い立ち位置ではなかった、という話だ。最後のところでは、ガレノス名義で13〜14世紀に流布したというラテン語訳の『種子について』という文書が取り上げられ(校注がまだ完全には行われていないものらしい)、それについての諸説(実は二冊の別々の書ではないかとか、いろいろ)がまとめられている。うーん、その「再発見前」の医学占星術がいよいよもって気になってくる……。