「ソフィスト」絡み

シンプリキオスの注解書は大まかに、アリストテレスを新プラトン主義に引き付けて論じたものというふうに位置づけられているけれど、どこがどうプラトン主義化しているのかというまとまった細かな話は案外見あたらないような気がしていた。そんなこともあって、ちょっと取り寄せてみたのが、マルク=アントワーヌ・ガヴレ『<ソピステース>読者としてのシンプリキオス』(Marc-Antoine Gavray, “Simplicius lecteur du Sophiste”, Klincksieck, Belge, 2007)。ベルギーの版元っすね。シンプリキオスのアリストテレス注解書に、意外に多く言及・引用されているのが、プラトンの『ソピステース(ソフィスト)』なのだといい、その引用箇所を文献学的に拾い上げて検討するというのが同書の基本的な趣旨。『範疇論注解』『自然学注解』『霊魂論注解』などを順に取り上げている。文献学的なアプローチなので、思想内容へはそれほど深く踏み込んでいるわけではないようだけれど、それでも取っかかりとしては面白いかも。論考部分は100ページほどで、後半は引用箇所を希仏対訳で載せている。個人的にはこの対訳部分のほうに惹かれるのだが……(笑)

『ソピステース』はそういえば以前にLoeb版で読んだはずなのだけれど、今振り返ると、中程くらいのところに『パルメニデース』を補完するような存在と非在の話が出てきたなあというくらいで、すっかり忘れてしまっている(苦笑)。プラトンの著作の中では意外に重要なのだというし、そのうちちゃんと再読しないと……(笑)。