アウグスティヌス再び

今年の「書物復権」でとりわけ気になったのが、ジルソン/べーナー『アウグスティヌスとトマス・アクィナス』(服部英次郎・藤本雄三訳、みすず書房、1981-2010)。ジルソンのビブリオグラフィーでこのタイトルのものは見あたらないなあ、と思っていたのだけれど、これ、なんと『キリスト教哲学』(1954)からの抄訳だった。なあんだ。でも、さっそく前半のアウグスティヌス部分を見ているのだけれど、なかなかに端的で面白い記述になっている。デカルトの「cogito ergo sum」のはるか先駆としてアウグスティヌスを挙げる論考をたまに見るけれど、これのソースがあっさりと判明(『自由意志論』、2.3.7)。さらには、「種子的原理」(rationes seminales)の話が『創世記注解』や『三位一体論』のどこにあるかとか、アウグスティヌスが形相の新しい発生をどうして否定することになるのかといった点なども端的に説明されていてよくわかる。うーむ、この本、個人的にはこれまでまったくスルーしていたけれど、とても有用なまとめの書という感じで気に入ってしまった。「書物復権」に改めて感謝。