ノルウェーの中世美術

近所の本屋でいつになく目についたのが『芸術新潮』の12月号。あまりに気にかけていない雑誌だけれど、いつもの月よりも置いている冊数が多いような気がする……。で、その特集が「ノルウェーの森へ–中世の美とオーロラの旅」。なんだか新幹線の車内誌『トランヴェール』の外国版という体裁だが……(笑)。でも、特集の中心をなす、美術史家の金沢百枝氏による木造教会探訪記は読み応え十分。写真も見事で、木造の教会の佇まいはとてもいい。細部の浮き彫りや板絵なども素晴らしい。ロマネスク建築の石造りの技法はノルウェーにも伝わっていたというけれど、素材の調達や資金の問題を超えて、地元の人々には木造への嗜好、こだわりがあったのではないか、という仮説が面白い。ノルウェーの中世美術史の大家だというホーラー氏を訪ねる件があるけれど、この方、異教の残滓を思わせる教会内の木彫りの彫刻などについて、「それは装飾だから意味はない」とにべもなく言い放つのが逆に印象的(笑)。実証を重んじる研究スタイルだというけれど、なるほど下手な解釈は恣意にすぎないのだからよしときなさいというのは、ある意味ごもっとも。