ブーニュー

閑話休題的だけれど、すっごく久しぶりにダニエル・ブーニューの本を眺めているところ。例によってあまり時間が取れないので、ちらちらと眺めている感じ(苦笑)。でもこれ、初の邦訳。ブーニュー『コミュニケーション学講義』(水島久光監訳、西兼志訳、書籍工房早山)。実はこの版元の別の刊行物をほんのちょっとだけお手伝いしてのいただきもの(ありがとうございます)。メディオロジーでドゥブレを支える理論派ブーニューの、たぶん最もとっつきやすい一冊。コミュニケーション学(もちろんメディオロジー絡みも含めて)の基本線を手堅くまとめた入門書という感じ。原書は1998年刊だけれど、2002年に改訂版が出ていたらしい。ドゥブレがどちらかというと客体的に組織論的な面に注力するのに対して、ブーニューはコミュニケーション学の側からメディオロジー的問題を眺める。そのため主体の問題などが明確に射程距離内に入ってきて、また異なった趣になっている、というのが全体的な印象。しばらく遠ざかっているので忘れていたけれど、ふいにいろいろ蘇ってきた(笑)。ちらちらとブーニュー本を読んでとりわけ個人的に思い出したのは、メディアと主体概念とが渾然一体となった生成変化的なプロセス論みたいな「変な」鬼子のようなものが出てこないかなあという漠然とした期待。ドゥブレともブーニューとも違う、どこかとんがった著者とかメディオロジー界隈から出てこないもんだろうかなんて、以前は思ったりもしたのだが……。ドゥブレは以前、着想源の一つにドゥルーズを挙げていたと思うけれど、そのあたりをもっと原点回帰的・ドゥルーズ的に極端化したもの、みたいな。うーん、まだそういうのは見あたらず、ちょっと残念?(笑)。