モザイク画の眼

ほれぼれするような見事な写真が満載の一冊。金沢百枝・小澤実『イタリア古寺巡礼 – ミラノ→ヴェネツィア』(新潮社、2010)。北イタリアの12の都市をそれぞれ代表する教会を取り上げ、特にその絵画や彫刻を中心とした写真と、美術史・歴史の双方の視点から織りなした解説とで構成されたミニ写真集。とくにモザイク画とか眺めていると、写真を通してであっても、なにやら落ち着いた気分になってくるから不思議だ。ロマネスク建築の教会がほとんどのようだけれど、内部を彩る11から13世紀ごろのモザイク画や壁画の人物像が、個人的にはすごく良い。なにが良いって、この鼻筋通って大きな眼の人物像たち。この形象、どれもなにやら似通っていて、さらには東ローマのイコンなどをも彷彿とさせ、なにやら通底する職人的伝統、一貫した美的感性のようなものが感じられる。とくにその眼、なにやら吸い寄せられるような、なんとも言えない雰囲気を醸している(笑)。この感覚って何ですかねえ……謎。

この中世ヨーロッパの古寺巡礼はシリーズでの刊行のようなので、続刊も大いに期待したい。どんどん出していただきたいぞ。