「六原理の書」

テキストだけならオンラインでも手に入る『六原理の書』(Liber sex principiorum)だけれど、解説その他を期待して、羅伊翻訳本(“Libro dei sei principi”, trad. Francesco Paparella, Bompiani)を入手する。さっそく序文を読み始める。これ、中世の論理学の入門書として、実際に学校で使われていたらしいテキストブックの一つ。長らく12世紀のギルベルトゥス・ポレタヌス(ポワチエのジルベール)の書とされてきたものの、最近ではそのアトリビューションは否定されていて、逸名著者の作ということになっているらしい。基本的にはアリストテレス『範疇論』の10の範疇のうちの六つ(「能動」「受動」「時」「場所」「姿勢」「所有」)を簡便に解説している書。それに、一章目の「形」と最終章の「多い・少ない」(これも『範疇論』から)についての話が加わっている。全体として、より長い著作の一部だった可能性もあるという。

このほか序文の冒頭部分では、中世初期の論理学の受容史についても簡単に触れている。ボエティウスやマルティアヌス・カペラ、カッシオドルス、セビリアのイシドルスなどお馴染みの名前が連なるなか、ちょっと気になったのが偽アウグスティヌス『一〇の範疇』という書名。これ、アリストテレスの『範疇論」に対してきわめて独自色の強いものになっているのだという。Wikipediaによれば、別名『テミスティオスによるパラフレーズ』となっているそうな。おお、これはぜひ読んでみたいぞ。で、これもどうやらオンラインのテキストが!(笑)