「イメージの網」

昨年末に出た注目作、リナ・ボルツォーニ『イメージの網 – 起源からシエナの聖ベルナルディーノまでの俗語による説教』(石井朗ほか訳、ありな書房)をざっと読み。いきなりドミニコ会の説教の話から始まる。説教師が当時の絵画のイメージをどう取り込んで受容させたかという問題が扱われている。ドミニコ会と絵画という点で、ディディ・ユベルマンの『フラ・アンジェリコ – 神秘神学と絵画表現』を思い出した(笑)。そちらは、ドミニコ会の神学がどのように絵画に「コーディング」されたかを追ったものだったけれど、こちらはちょうど方向性が逆で、絵画(に表されたイメージ)がどのように説教に「コーディング」されているかという話になる(のかな)。説教が絵画の解読格子を用意していたというのがとても興味深い。イメージとテキストの相互作用?いやいや、それらは複合的に一体化しているのだと著者は言う。「(……)先に言葉があってそののちにイメージがあったということではなく、またその反対でもない。むしろ私たちは、一方を他方から厳密に区別することが正しくなく、あまり有益でないような、何かを目の前にしている」(p.61)。

扱われるイメージも多岐に及んでいて、「知恵の塔」「系統図」「車輪」「階段」などの概念図などが順次取り上げられる。ルルスやヨアキム(表紙になっているが)の用いた図も当然のごとく触れられている。それらが、シモーネ・ダ・カッシナの『霊的対話』とか、ヤコポーネ・ダ・トーティの『讃歌集』などのテキストと関連づけられる様はなんとも興味深い。そしてクライマックスは、シエナのベルナルディーノ(15世紀)の説教の話。そこでは当時の絵画表現が、ある意味独創的に活用されて説教に取り込まれているといい、その説教の世界は、様々なモチーフが絡み合う、さながらイメジャリーの集大成のよう……最も長い第四章でもって、同書はそのことを実に強く訴えかけてくる。なるほど、説教研究って一つのトレンドになるわけだ(笑)。

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