サヴァールの「ボルジア一族」

日本でも『チェーザレ』が人気だけれど、米国やカナダではニール・ジョーダン製作のTVシリーズ『Borgias』なんてのを放映しているそうで、さらに仏独共同製作の『Borgia』というTVシリーズも控えているという。日本の戦国時代ものではないけれど、ボルジア一族というのは歴史ものとしてやはり一定の人気がある素材らしい。で、ジョルディ・サヴァール&エスペリオンXXが毎年出しているブック付き「音楽絵巻」(と勝手に呼ばせてもらうけれど)CD集の新盤は、そのボルジア一族の歴史を音楽でもって追体験しようというもの(Medieval Classical/Dinastia Borja: Savall / Hesperion Xxi La Capela Reial De Catalunya (Hyb))。でもTVシリーズの便乗企画などではなく、実はこれ、2010年がボルジア家から輩出した聖人、フランシスコ・ボルハの生誕500年に当たるということで企画されたものらしい。例によって各国語で記されたブックと、CD3枚という長大さ。ボルジア家をめぐる年代記順に、関連しそうな曲をピックアップして構成している。基本的に各曲をじっくり聴くというよりは、曲を通じて歴史に想いを馳せていただこうという趣向。毎度のことながら、これはこれで面白い試み。今回も最初はムスリム時代のバレンシア、つまりはアラブ系の音楽から始まり、最後はフランシスコの列聖をグレゴリオ聖歌(”Pange lingua gloriosi”)で飾るという、トラッド系から聖歌、器楽曲まで幅広くこなすサヴァール一座ならではの盤となっている。ちなみに、声楽を担当するのはこれまたお馴染みラ・カペッリャ・レイアル・デ・カタルーニャ。

個人的な聴き所を挙げておくと、まずCD1ではなんといっても11曲目から14曲目まで居並ぶ、モンテカッシーノ修道院の写本から作者不詳の聖歌(以前、それらを集めたCDも出していたと思う)。CD2はジョスカン・デプレとかも入っているけれど、末尾の20曲目、作者不詳の「バレンシアのシビラ」(Sibil la Valenciana)がなかなかいい。CD3は一番盛り上がる一枚で、ルイス・ミランのファンタシアなども入っているけれど、なんといっても要所要所を押さえているのはクリストバル・デ・モラレスの宗教曲。これが全体を妙に引き締めている感じで、とても好印象だったりする。