映画版「ニーベルンゲン」

実に久々に(20年以上ぶりくらい?)にフリッツ・ラングの映画『ニーベルンゲン』(”Die Nibelungen”, 1923年、ドイツ)を観た。第一部(ジークフリート)第二部(クリームヒルトの復讐)を合わせると5時間の大作。今回のものはオリジナルにかなり近い復元版とのこと。ちょうど最近「ニーベルンゲンの歌」の新訳が出たこともあって、これを観たいなあと思っていた。で、DVDを購入。ストーリーラインは大筋はほぼ原作どおりで(岩波版がすぐに見つからないので、昔読んだ印象だけで判断しているが(笑))、ジークフリート中心に描かれるため躍動感溢れる前半と、復讐譚となるため終盤に向かって張り詰めた緊張感が高まっていく後半と、どちらもかなりの重厚感で見応えがある(後半が途中やや冗長な感じもないではないが)。確か原作のほうは、どの登場人物たちもかなり極端な性格のように読めてしまうのだったけれど、この映画はそれを踏襲しつつ、あまりに図式的なその群像劇にいくばくかの人間味を加味した造形になっている感じ(ロマン主義的、か?)。ちなみにワーグナーの『指輪』よりも、この『ニーベルンゲン』のほうがストーリー展開に無理がないのは言うまでもない(笑)。ギュンターとハーゲンとブルンヒルト(ブリュンヒルデ)が復讐の三重唱を歌ったとしてもなんの違和感もありまっせん……(歌わないけど)。

そういえばジークフリートは最初、鍛冶屋のミーメの弟子として登場するのだった。で、余談だけれどつい最近、イアン・グッドール「中世の鍛冶屋とその産品」という考古学系のペーパーが紹介されていた(Ian H. Goodall, ‘The Medieval blacksmith and his products’ in “Medieval Industry”, ed. by D.W. Crossley, Council for British Archeology, 1981)。出土品のラフスケッチを交えて、具体的な品をカタログ的に列挙されている(本当は写真が見たい気がするけれどね)。いずれにしても、具体的な職人の活動とこうした考古学的史料とを結びつけるのは案外難しい気がする。必要な想像力を養うには、やはりなにがしかの映像資料や実地的な見聞がものを言うのだろうなあ、と改めて。なにやらそのあたり、人類学・民族学と歴史が交差する場でもありそうで、興味は尽きないのだけれど……。