ストア派の長い影

フランシスコ会とストア派というテーマが面白そうだという話を少し前に記したけれど、以来読んでいるトロイヴァネン論文でも触れられていたジェラール・ヴェルベケの『中世思想に見られるストア派』(Gerard Verbeke, “The Presence of Stoicism in Medieval Thought”, Catholic University of America Press, 1983)をようやくゲットし、早速目を通してみた。100ページほどの小著なのだけれど、ストア派の思想がいかに古代末期から中世へと、暗に明に命脈を保ち続けてきたのか、その全体的なイメージが掴めるという好著。セネカやキケロがいかに明示されないまま引用されているか、あるいはその思想内容が取り込まれ活かされているかを、概論的に(とはいえ結構執拗に細部が羅列されていく)扱ってみせたのが第一章。第二章から第四章まではテーマ別となり、それぞれストア派的な物質主義、倫理学、運命論と自由の問題を扱っている。どの章もかなり大きなスパン(古代末期から中世盛期まで)で描かれていて、歯切れのよい簡素な文面にもかかわらず、なにやらそれぞれ壮大な思想絵巻が立ち上がるような印象を与えてくれる。細かい点はとても細かい。けれどもやはりこれは序論ないしは総論という位置づけではある。これを踏まえた上でより細かな関係性の議論が展開されなくてはならないはずなのだが、さて、そのあたりの現状はどうなっているのかしら……。