パレスチナ……

イスラエルによるガザ地区の攻撃。仏語の歴史サイト「Herodote.net」がパレスチナ情勢の基本をまとめているが、今回のはなんだかハマスを叩くというよりも、戦争景気みたいなのを煽ろうとしているかのようで、ほとんどミニ・ブッシュという感じにしか見えない。地上戦になって一般市民の犠牲はさらに増えているといい、切り札的に(?)中東に乗り込んだフランスのサルコジの調停もまったく意味をなさず、事実上のスタンドプレーで終わったようで。「そもそもハマスが悪い」なんてイスラエル側の軍事プロパガンダをなぞるだけの捨て台詞を吐いて帰国とは情けないんでないの?パレスチナ人(あるいは周辺のアラブ諸国)がそんなプロパガンダにのっかってハマスへと反対運動とか起こすとはとうてい思えないし(各地のデモは当然反イスラエルだし)、被害の責任関係から言うなら、いきなり大規模な空爆に出たイスラエル側の責任はやはり重大なわけで……。

そんなことを思っていると暗澹たる気分になってくるわけだけれど、気分を変えるべく、ちらちら眺めていた大修館書店の『月刊言語』12月号の特集(「古典語・古代語の世界」)を取り上げておこう。同特集では、アラビア語とヘブライ語の紹介記事はどちらも並んで、「世界言語遺産」みたいなものがあったら……という仮定で書き進められているのが面白い(これって編集部からのお題ですかね?)。アラビア語について面白いのは、クルアーン(コーラン)が本来的に暗唱するものであり、書の形で正典化したのも第三代カリフの時代で、当時は正書法なども確立しておらず、識字人口も限られていて、暗唱と照らし合わせないと読めないという時代が1世紀あまり続いたのだという。そのあたりが聖書との決定的な違いなのだそうだ。

ヘブライ語のほうでは、19世紀に復活したヘブライ語が古い言葉の復元というよりも、たとえば音素体系ではイディッシュ語やアラビア語から音素を取り込んだ折衷案だった、といった話が興味深い。国際連盟の委託でイギリスがパレスチナを統治した時分、英語、アラビア語、ヘブライ語を公用語に定めたといい、いったん死語になった言語が公用語に返り咲くということがそもそも前代未聞なのだという。そりゃそうだよねえ。それにしても、もともとセム系だし、近代語に限ってみてもやはり兄弟関係と言えなくもなさそうな両言語なのだけれどねえ……。