『世界の永続性について』13章

フィロポノスの『世界の永続性について』(Johanness Philoponos, De aeternitate mundi / Über die Ewigkeit der Welt V, Clemens Scholten(ubs), Brepols, 2011)13章は、それまでのどちらかというと形而上学的な話から、自然学的な話へとシフトしている。これもまた長い一章なので大きくポイントだけを整理しておくと、まず、注解のもとになっているプロクロスの文章のポイントはこんな感じ。天空の運動は円運動だが、それが自然の運動であるならば、元素のレベルでそうした運動をなすはずで、よって天空は四元素とは別の元素から成る。生成と消滅が対をなす元素の動きであるなら、別元素の天空は生成も消滅もしないものと考えられる。部分が生成も消滅もしないなら全体もそうであり、したがって天空は生成も消滅もしない……。これに対してフィロポノスは、天空は四元素とは別の元素(アリストテレスにもとづく第五元素)から成るのではなく、プラトンにもとづき、やはり四元素から成るとの基本的立場を示している。その上で、円運動は四元素の自然な動きではないとし、それは外部の力(霊魂の力)によって引き起こされているのだとしている。

天空もやはり同じ元素でできた生成・消滅可能なものだということになる。元素は生成・消滅がありえ(流転する)、それからなる世界の一部(たとえば動物とか)も生成・消滅がありえ、ひいてはコスモスという全体も生成・消滅がありうる……。こうしてフィロポノスは、『ティマイオス』などのテキストを引き合いに出しながら、天空を特徴付けるのはより細やかで純粋な火、燃焼性というよりも生命を育む火であって、それが天空を満たしているという説を示し、プラトンのそうした学説を後継者たちが歪曲したとして批判してみせる。批判対象となっているプロクロスには当然手厳しいものの(アリストテレス的な第五元素へと日和った(?)と見る)、前にも出てきたけれど、ポルピュリオスについてはここでもまた、プラトンに忠実だとして高い評価を与えている。