眼鏡の図像学……

リミニのグレゴリウスについて学ぼうと思い、先日古書で『命題集第一巻・第二巻注解』の1955年のリプリント版(1522年のヴェネティア版)(Gregorii Ariminensis O.E.S.A. Super primum et secundum sententiarum, Reprint of the 1522 Edition, The Franciscan Institute ST. Bonaventure, N.Y., 1955)を格安で入手したのだけれど、なんとびっくり。大型本を縮小してリプリントしているため、老眼になってきている身にはかなりつらいほど文字が小さい(右図参照)。ルーペがないと目が相当しんどいレベル。なにかこの、蝋燭の明かりで読んで目を悪くしたという遥か先人たちの苦労を思わずにはいられない(苦笑)。

そんなわけで、少し前に読んだ短い論考を思い出した。眼鏡の図像学という感じの一編で、レトーチャ&ドレイフュス「眼鏡を描いた初期木版画」(C.E. Letocha and J. Dreyfus, Early prints depicting eyeglasses, Archives of ophthalmology, vol. 120 (11), 2002, pp. 1577-1580)というもの。西欧で木版が始まるのは14世紀の第3四半期ごろからだというが、これは15世紀を中心に、そうした木版で刷られた印刷物から眼鏡を描いた挿絵を10数点紹介したもの。眼鏡が発明されたのは1285年ごろのピサにおいてで、初めて絵画に眼鏡が登場するのは、1352年のトレヴィーゾのサン・ニコロ教会参事会会議室の壁画なのだそうだ。その後14世紀、15世紀の油絵などにも描かれ、次いで15世紀の木版画にも登場する。近視用の凹面レンズを用いた眼鏡も15世紀末には使われていたというが、木版画に描かれているのは読書時の拡大用の眼鏡が圧倒的に多い。で、その図像からわかるのは、初期の眼鏡がレンズとフレームが2対に分かれていて、それらをリベットで止めていたということ。眼鏡の発明前に亡くなっている人の肖像に眼鏡を描きこむこともあったといい、一般には人物の碩学ぶりなどを暗示しているというが、ときには偽の知識をかざす愚かしさを(皮肉をこめて)表したりもしているという。なるほど、メガネのコノテーションは初期のころもそれほど違わないということか。