医者としてのマイモニデス

『迷える者への道案内』など、神学的・哲学的議論がともすれば目につくマイモニデスだが、実は医者としても活躍している。で、そのマイモニデスの医学書について取り上げた小論というか小アーティクル(一種の紹介文かな)を読む。フレッド・ロスナー「中世の卓越した医師、モーゼス・マイモニデスの生涯」(Fred Rosner, The Life of Moses Maimonides, a Prominent Medieval Physician, Einstein Quarterly Journal of Biology and Medicine, Vol.19, 2002)というもの。マイモニデスも相当波乱に満ちた生涯を送っている。迫害を逃れてフォスタット(カイロ)に渡ったところで父親や兄弟を失い、そこで生計を立てるために医者を稼業して始める。その後サラディンが十字軍との戦争で留守にしていたヴィジエ・アル・ファディルの宮廷医として指名され、やがてその名はエジプト内外に広く知られるようになり、サラディン亡き後もその息子に仕えた。医学教育をどこで受けたかなどはほとんどわかっていないというものの、著作にはヒポクラテス、ガレノス、アリストテレス、ラーゼス、アル・ファラービー、イブン・ズフル(12世紀のセビリャの医者)などが頻繁に引用されているという。

で、マイモニデスが記した医学書もいろいろあるようで、同紹介文では10冊ほど概要がまとめられている。『ガレノス抜粋(治療の方法)』『ヒポクラテス格言注解』『モーセ(ピルケイ・モシェ)医学格言』(これが一番の大著とか)、『痔疾論』『同棲論』『喘息論』『毒・解毒論』『養生論』『調和の説明』『薬名辞典』。うーむ、なかなか面白そうだ。校注本も各種出ているらしいし、機会があればぜひ見てみよう。

↓ Wikipedia(en)より、コルドバにあるというマイモニデスの像。なかなか渋い(笑)。