キケロの自然学へ

今年は年越し本の消化がなかなか進まないなあ……(苦笑)。これもその1つ。角田幸彦『体系的哲学者キケローの世界』(文化書房博文社、2008)。キケロの『アカデミカ』『神々の本性について』、倫理学系の著作のそれぞれについて、いわば注解のように、学派の伝統や社会背景などを潤沢に織り込んで解説したもの。これは原典にあたるとき手元に置いておきたい一冊かも。キケロは折衷主義みたいに言われることが多かったと思うけれど、ここでは基本スタンスとしてその折衷主義に肯定的な意味を付している(これはどうやら世界的な研究動向らしい)。その懐疑主義的姿勢についても、著者は「吟味主義」と言い換えてみせる。個人的には12世紀のキケロ主義の流れという文脈でキケロを読み直そうとだいぶ前から思っているのだけれど(なかなか進んでいないのだけれど)、どうもそれだと倫理学系が重視される感じになってしまうが、この同書を読んで、むしろその『神々の本性について』が重要かも、という気がしてきた。これはコスモロジーも含む自然学の対話編。未読なのだけれど、著者の解説によれば、キケロのテキストには、エピクロス派への共感や自派であるストア派そのものへの批判、アカデメイア派的な姿勢などが複合的に示されているらしい。それにもまして、個々の思想内容、たとえばストア派的な熱(エーテル)の考え方などは、12世紀のコンシュのギヨームあたり(?)に影響しているような印象が強い。うん、キケロのテキストの中世での受容とかも、ちゃんと確認してみたい。