パノポリスのゾシモス

Les Alchimistes Grecs (Collection Des Universites De France Serie Grecque)先月末くらいからズラズラと見ていたのが、パノポリスのゾシモスのものとされる錬金術関係のテキスト(Les Alchimistes Grecs (Collection des Universités de France, Serie Grecque), tome IV, première partie, Zosime de Panopolis, mémoires authetiques, Les Belles Lettres, 2002)。ようやく一通り見終わった。ゾシモスは3世紀から4世紀初めごろの人物で、ギリシア語圏の初期の錬金術師と言われている。ちなみにパノポリスはエジプトの都市で、現在のアフミームにあたるのだそうだ。この版に収録されているテキストは、ゾシモスに帰される「真正な手記」13編の校注版。器具の説明や錬成方法の概要などに加えて、ある種の幻視などを記したものもあり、これらが微妙にオーバーラップしている様子がとても興味深い。客体の操作(金属が段階別に変成を遂げる)と主体の成立(人間も、鉛的人間とか、銀的人間とか段階別に言われる)とがパラレルに描かれ、また強いていうなら、前者から後者が導かれているような(少なくとも着想されているような)記述になっていて、とても興味深いものがある。というわけで、これも夏から秋・冬にかけて、少し時間をかけて訳出していこうかと思っている(たぶん手記1と、手記10あたり)。