(今さらながら)電子書籍の引用問題

またまた野暮用で田舎へ。今回の読書のお供は、なんと電子書籍。最近iPhoneを昨年の6 plusに変え(これまでは5s)、格安simで運用し始めたのだけれど、事前の噂どおり、これが画面サイズ的に文庫などを読む感覚に近く、携帯読書端末としてなかなか優れているように思われたのだ。モバイルデバイスでの電子書籍はまだ慣れていないせいか、読むというよりも、どこか眼が画面上を滑っていくみたいな感覚があって、なにやらちょっと新鮮ではある(苦笑)。でも一つ問題なのは(もちろんすでにだいぶ前から指摘されている問題だけれど)、やはり引用の際の出典表示ができないという点。電子書籍(EPUB)の場合、フォントの大きさを変えるとページ番号まで変わってしまうので(理系の本などで、レイアウトを保持しているものもあるようだが)、これでは引用箇所が指示・特定できない。うーん、悩ましい問題だ。皆どうしているのか?あるいは結局電子書籍はそういう用途では使わない・使えないということか。読んでいる箇所が全体の何%にあたるかが表示できたりもするけれど、微妙にアバウトな感じもなきにしもあらずだし。ネット上ではアマゾンの「なか見検索」を使うなんてやり方も紹介されていたけれど、それがない場合はどうしようもない。

プラトンの呪縛 (講談社学術文庫)ちなみに、さしあたり読んでいるのは、最近電子書籍化された佐々木毅『プラトンの呪縛 (講談社学術文庫)』(講談社、2015)。もとは1999年刊行のもので、19世紀から20世紀にかけてプラトンが主にドイツ語圏でどのように受容されてきたかをまとめた興味深い一冊。とりあえずざっと第一部を眺めてみた。プラトンを体系的な哲学者として扱う伝統から、より文献学的な解釈、あるいは人間くさい解釈、さらにはロマン主義や貴族主義などのバイアスを経た読みなどを経て、果てはファシズムまがいとして批判なされていた局面すらあったといった話。なるほど、いかようにも読めてしまう間口の広さは、ある意味、時代を経た古典の宿命とも言えるのかもしれないけれど、プラトンがかくも政治的に読み替えられていく様は、時代ごとの空気を映し出しているようでなかなか興味深い。