最近の古典語参考書

ラテン語とギリシア語を同時に学ぶ古典語についても最近はあまり語学としての参考書を追っていないのだけれど、ちょっと手に取る機会があって、これはなかなかいいなあと思ったのが、小倉博行『ラテン語とギリシア語を同時に学ぶ』(白水社、2015)。西欧の古典語(ラテン語、ギリシア語)を両方囓った人ならば、誰もが一度は思い至るであろうことを、同書は具体的に実現している。つまり、早い段階から両言語を一緒に見て対照していけば、各言語の理解も深まるのではないかという仮説だ。類似する文法項目では同じような用例を挙げたり、相異点が目立つ項目ではそれぞれの特徴点を指摘したりと、とても面白い。とくに、どちらかだけでも一通り学んだという層を対象にしている感じだ(手に取ったのは第3刷なのだけれど、白水社のページにある正誤表はすでに反映されている)。欲を言えば、練習問題などもあればよかったかなと思うのだけれどね。最近の語学の参考書はどれもそうした練習問題に重点を置かない傾向があるような気がする。放送大学で始まっている講座「ラテン語の世界」しかり(テキスト:ヘルマン・ゴチェフスキ『ラテン語の世界 (放送大学教材)』、放送大学教育振興会、2016)。そのあたりは、ちょっと残念なところ。あと、これまた最近出たマイアー&シュタインタール『古代ギリシャ語語彙集 改訂版 基本語から歴史/哲学/文学/新約聖書まで』(山口義久監訳、大阪公立大学共同出版会、2016)も、最初の基本語彙のボキャビルとしてとても有益な気がした。前置詞や小辞の類のまとめとか(学習者個人で単語帳を作ったりするものだけれど)、一覧にまとめてくれているところがとても親切。ありそうでこれまでなかった一冊。

ラテン語の世界 (放送大学教材) 古代ギリシャ語語彙集 改訂版 基本語から歴史/哲学/文学/新約聖書まで