カッシーラーから見たルソー

ジャン=ジャック・ルソー問題 [新装版]このところ時間が取れず、先週はブログも完全にお休み。今週あたりからはぼちぼちと再開しよう。というわけで、まずはこれ。カッシーラー『ジャン=ジャック・ルソー問題 [新装版]』(生松敬三訳、みすず書房)。1974年刊行のものの新装版(2015)。原著は1932年刊だというが、今読んでもなかなか味わい深い。個人的にはルソーのドイツ語圏での受容というのはどんなだったかに関心を覚えていたのだけれど、ここで展開するのはそういう話ではなく、ルソーの思想内容、とりわけ社会の問題、法の問題についての視座が、表面的な矛盾の数々にもかかわらず一貫していること(第一論文)、さらに倫理学から感情論を切り離すという、当時の倫理学に対立するかのような独自の体系をしつらえていることを(第二論文)を、様々な角度から検証していくというのが趣旨となっている。でも、その過程で、そうしたルソーの独自性、一貫性を理解していたのは、同時代においてほぼカントだけだった(!)という指摘がなされている。うーむ、カッシーラーは新カント派に属していたわけでもあり、また20世紀初頭あたりの時代的な要因もあって、カントはかなり贔屓目で見られていたような感じもなきにしもあらずだが、改めて現代的な研究によるルソーの受容史というのを見てみたい気がする。