新刊訳書 – 今度は戦争論!

敵をつくる―〈良心にしたがって殺す〉ことを可能にするものアマゾンに書影が出たので、記念に宣伝しておこう。翻訳の新刊がようやく出た。ピエール・コネサ『敵をつくる―〈良心にしたがって殺す〉ことを可能にするもの』(拙訳、風行社、2016)。なんと今回は戦争論。コネサは本邦ではほとんど知られていないと思うけれど(ル・モンド・ディプロマティック掲載の論考が、雑誌媒体やネットでいくつか訳出されている)、以前はフランス国防省の研究員でもあったというその道のプロ。同書は平和主義の本ではなく、帯にもあるように、戦争にいたるイメージ領域(つまりこの場合なら「敵視」の心理状態とそれを取り囲む諸々の具体物)がどう構築されるかを分析しようというエッセイ(学術論文的なものではない)。現状認識としていったん戦争なるものの実在を受け容れるところからしか話は始まらないわけだが(その意味では、同書は左派的でも右派的でもない……というかある意味両派的?)、戦争を支えるイメージ領域が構築されているものであるならば、その脱構築も可能なはずだとして、戦争回避への方途をも検討してはいる。とはいえ、当然ながらそれはそう簡単な話にはならないわけで、さしあたり、構築過程の分析、あるいは構築される「敵」のイメージの類型論が中心となる。抽象論に向かわず、リアルポリティクスに目配せしているところなどが読ませどころか(多少とも随所に事項の重複などはあるのだけれど)。というわけで、ある種の党派的なものを越えて戦争について考えたい向きにはぜひお薦めだ(と訳者が言うのもなんだが)。お楽しみください。