「古典語・古典学系」カテゴリーアーカイブ

キケロの自然学へ

今年は年越し本の消化がなかなか進まないなあ……(苦笑)。これもその1つ。角田幸彦『体系的哲学者キケローの世界』(文化書房博文社、2008)。キケロの『アカデミカ』『神々の本性について』、倫理学系の著作のそれぞれについて、いわば注解のように、学派の伝統や社会背景などを潤沢に織り込んで解説したもの。これは原典にあたるとき手元に置いておきたい一冊かも。キケロは折衷主義みたいに言われることが多かったと思うけれど、ここでは基本スタンスとしてその折衷主義に肯定的な意味を付している(これはどうやら世界的な研究動向らしい)。その懐疑主義的姿勢についても、著者は「吟味主義」と言い換えてみせる。個人的には12世紀のキケロ主義の流れという文脈でキケロを読み直そうとだいぶ前から思っているのだけれど(なかなか進んでいないのだけれど)、どうもそれだと倫理学系が重視される感じになってしまうが、この同書を読んで、むしろその『神々の本性について』が重要かも、という気がしてきた。これはコスモロジーも含む自然学の対話編。未読なのだけれど、著者の解説によれば、キケロのテキストには、エピクロス派への共感や自派であるストア派そのものへの批判、アカデメイア派的な姿勢などが複合的に示されているらしい。それにもまして、個々の思想内容、たとえばストア派的な熱(エーテル)の考え方などは、12世紀のコンシュのギヨームあたり(?)に影響しているような印象が強い。うん、キケロのテキストの中世での受容とかも、ちゃんと確認してみたい。

パレスチナ……

イスラエルによるガザ地区の攻撃。仏語の歴史サイト「Herodote.net」がパレスチナ情勢の基本をまとめているが、今回のはなんだかハマスを叩くというよりも、戦争景気みたいなのを煽ろうとしているかのようで、ほとんどミニ・ブッシュという感じにしか見えない。地上戦になって一般市民の犠牲はさらに増えているといい、切り札的に(?)中東に乗り込んだフランスのサルコジの調停もまったく意味をなさず、事実上のスタンドプレーで終わったようで。「そもそもハマスが悪い」なんてイスラエル側の軍事プロパガンダをなぞるだけの捨て台詞を吐いて帰国とは情けないんでないの?パレスチナ人(あるいは周辺のアラブ諸国)がそんなプロパガンダにのっかってハマスへと反対運動とか起こすとはとうてい思えないし(各地のデモは当然反イスラエルだし)、被害の責任関係から言うなら、いきなり大規模な空爆に出たイスラエル側の責任はやはり重大なわけで……。

そんなことを思っていると暗澹たる気分になってくるわけだけれど、気分を変えるべく、ちらちら眺めていた大修館書店の『月刊言語』12月号の特集(「古典語・古代語の世界」)を取り上げておこう。同特集では、アラビア語とヘブライ語の紹介記事はどちらも並んで、「世界言語遺産」みたいなものがあったら……という仮定で書き進められているのが面白い(これって編集部からのお題ですかね?)。アラビア語について面白いのは、クルアーン(コーラン)が本来的に暗唱するものであり、書の形で正典化したのも第三代カリフの時代で、当時は正書法なども確立しておらず、識字人口も限られていて、暗唱と照らし合わせないと読めないという時代が1世紀あまり続いたのだという。そのあたりが聖書との決定的な違いなのだそうだ。

ヘブライ語のほうでは、19世紀に復活したヘブライ語が古い言葉の復元というよりも、たとえば音素体系ではイディッシュ語やアラビア語から音素を取り込んだ折衷案だった、といった話が興味深い。国際連盟の委託でイギリスがパレスチナを統治した時分、英語、アラビア語、ヘブライ語を公用語に定めたといい、いったん死語になった言語が公用語に返り咲くということがそもそも前代未聞なのだという。そりゃそうだよねえ。それにしても、もともとセム系だし、近代語に限ってみてもやはり兄弟関係と言えなくもなさそうな両言語なのだけれどねえ……。

iPod Touchで古典を読みたい(その2)

うーむ、ちょっと風邪ぎみ……。午後から夕方はダウン。

で、今ごろのそのそとiTunes Storeを見ていたら、なんと、Greek-English Lexicon
iconというのが出ているではないか!有料アプリだけれど、これは即買い(230円)。1924年のLiddle & Scott(パブリックドメインなんですね)をもとにした古典ギリシア語 – 英語の辞書。iPod Touchで使うと、検索語の入力用にソフトキーボードがギリシア文字で出る。なかなかいいねえ、これ。表示とかは普通……というかちょっと見づらい感じも。でもこれで、出先でギリシア語本読むときには重宝しそうだ。うん、なんか元気出てきた(笑)。

iPod Touchで古典を読みたい

iPod Touchのアプリケーションを有料・無料といろいろダウンロードしているのだけれど、少しずつながらラテン語やギリシア語のツールも出てきている(まだまだ圧倒的に数が足りないけれど)。まずラテン語は、少々値段は張るけれど、UltralinguaのLatin-English Translation Dictionary(こちら→Latin-English Translation Dictionary by Ultralinguaが、双方向で検索できてなかなか良い感じ。語数も結構入っている。格言集みたいなのはあるけれど、残念ながらラテン語の電子書籍は見あたらない(?)。

ギリシア語は、今度はオフラインで使える辞書がなくみたいで、テキストとしてはギリシア語版の入った新約聖書などがある(こちら→Holy Bible)。ただしギリシア語表記は気息記号やアクセントはなし。あと、これも同じく聖書からの単語をパラパラやって確認できる練習帳GreekFlashというのもある(入門向きかな→GreekFlash)。聖書のギリシア語の音声教材はオーディオブックがある。Readings in the Greek New Testamentというもの(こちら→Readings In the Greek New Testament (Unabridged))。電子書籍などでプラトンとかアリストテレスとかあるといいのにねえ。

あと番外編的なのだけれど、ダンテの『神曲』が電子書籍になっている。これは嬉しい。La Divina Commedia(こちら→La Divina Commedia)。全体として英訳ものはいろいろと出回っているけれど、ばっかりじゃなく、原典ものもいろいろと出てきてほしいところだ。