とりわけ16、17世紀に盛んになるという医学占星術については、以前から少しばかり興味を抱いていた。おおもとはプトレマイオスの『テトラビブロス』だけれど、その後の古代末期とか中世での展開というのがよく見えてこないなあ、と、これもピエトロが一つの結節点をなしているのは間違いないようで、少しちゃんと読んでみたいと思っているところ。サレルモの伝統の次はパドヴァの伝統が重要になる、ということかしらね。実は少し前に、ピエトロの医学書『哲学者と医者の間に生じた論争の調停の書』(“Conciliator differentiarum quae inter philosophos et medicos versantur”)(略して”Conciliator”)の1565年版のリプリント版を入手したので、来年はこれを少しづつ読んでいきたいと思っている。
11月のミンコフスキー&ルーヴル宮音楽隊の来日公演は行けずに残念だった(なかなか面白い公演だったと聞く)。で、そんなわけでその組み合わせの最新録音を聴く。『パーセル、ヘンデル、ハイドン – 聖セシリアに捧ぐ』(To Saint Cecilia – H.Purcell, Handel, Haydn / Marc Minkowski, Les Musiciens du Louvre, Lucy Crowe, etc)。季節的にはちょうど一ヶ月遅れ。というのは音楽の守護聖人とされる聖セシリア(チェチリア)の祝日は11月22日だから(苦笑)。それにしても、この聖人をテーマとした曲を、今年がメモリアル・イヤーだったヘンデルとハイドン、パーセル(実はこちらも生誕350年)からもってきたところが憎い(笑)。そんなわけで二重・三重に楽しめる二枚組。演奏はもうまったく文句なしという感じだし、三大作曲家のそれぞれの持ち味がとてもよくわかる趣向(全体的に凝った凛々しい音楽のパーセル、メロディ・メーカー然としたヘンデル、そして堅実かつメリハリの利いたハイドン)。収録曲はパーセル「万歳、輝かしきセシリア」、ヘンデル「聖セシリアの祝日のためのオード」、ハイドン「聖チェチリア・ミサ』。パーセルが個人的には好みなのだけれど、ヘンデルもときにとても美しいし、ハイドンのミサ曲も意外にいいなあと。
ケネス・シースキンという人の『マイモニデスによる世界の起源』(Kenneth Seeskinm, “Maimonides on the Origin of the World”, Cambridge, 2005)を読み始める。マイモニデスのコスモロジー系の話なのだけれど、基本的には概説書という感じ。長さも200ページちょいだし。 創造神、『ティマイオス』、アリストテレスの世界の永続性、プロティノスなど、創成神話の諸テーマをめぐりながら、マイモニデスのスタンスをそれらとつき合わせて確認・整理するというもので、マイモニデスの合理主義的な立場がいかにそれらのテーマを批判しているかに重点が置かれているように思える。うーむ、正面切ってのマイモニデスのコスモゴニー思想を論じるというのを期待していたので、少し違う感じも(苦笑)。とはいうものの、全体的な整理としてはなかなか有益かもしれないなあ、と気を取り直してもう少し読み進めようかと思っているところ。