岡野利津子『プロティノスの認識論–一なるものからの分化・展開』(知泉書館、2008)を一通り。プロティノスのヌース(知性)からの発出論を中心に、手堅くまとめた一冊。確かにその知性論は、一見(表層的になぞるだけなら)わりとすんなりわかった気にさせられるのだけれど、読み込むといろいろと難しい(苦笑)。その意味では、こうした整理はやはりありがたく、プロティノスを読むときの参考書として有益だ。けれども個人的には、最新の研究動向の紹介とかをもっと入れてほしかったなあと思う。一部の章は博論をまとめたものといい、先行研究への言及が少しだけある。おそらくはそうした先行研究のまとめみたいなところはばっさりカットしてあるのだろうけれど……。うん、プロティノスに続いて、プロクロスあたりの発出論とかもきちんと整理したものがあるといいなあ、と改めて思う。