ピロポノスの方へ

メルマガのほうでインペトゥス理論(物体に力が伝わるという中世の運動理論)を復習しているのだけれど、その関係でヨアンネス・ピロポノスの『自然学注解』(Galicaで落とせる)をごく一部分ながら読んでみた。これがなかなか面白そう。ちゃんと最初から読もうかなあ(大変そうだけど)。くだんのインペトゥス理論がらみの話は真空についての論難部分に関連した文脈で出てくるのだけれど、とにかくアリストテレス批判っぽい話が微妙ににじんでいる感じ。ちょっと古い平凡社の『哲学事典』(1971-95)などを引くと、アリストテレスへの批判について「どの程度彼の独創で、どの程度当時までの反アリストテレス思想の伝統に由来しているかは、まだ明確ではない」なんて記してある(p.1171)。うーん、このあたりのことって、その後どのくらい研究が進んでいるのかしら、と関心が沸く。

さらにインペトゥス理論の先駆としての位置づけについても、「この概念が10世紀アラビアの注釈者たちを通じて、ビュリダン、サクソニアのアルベルトゥスら14世紀インペトゥス理論提唱者に伝承された、という説は、そのルートについて完全な確証を得ていない」(同)とある。『自然学注解』は確かシリア語、アラビア語訳はあったはずだが、ということはそこからのラテン語訳がないということなのかしら?でも、おそらく『世界の永遠性について』の話だと思うのだけれど、ボナヴェントゥラとかが影響を受けたという話もあったはず。うーん、ピロポノスの受容とか、基本的なところからちょっと確認せねば(笑)。