これまた思うところあって、アンセルムスに注目したいと思い、瀬戸一夫『時間の思想史』(勁草書房、2008)を読み始める。というか、以前一度読みかけて中断していたのを再開。忘れているので、頭から読み直しているところ(苦笑)。『時間の民族史』『時間の政治史』に続く「時間三部作」の三作目とのこと。まだ5分の1に満たない始まりのところだけれど、前の一連の著作で展開していた、ベレンガリウスやランフランクスの神学議論のいわばおさらいから入っていく感じで、こちらもいろいろ思い出しつつページを繰る。ランフランクスの後を継ぐ形で登場するのがアンセルムスだ。ランフランクスが用いた議論のモデルを、神学的に裏打ちして完成させるというのが、同書での基本的なアンセルムスの位置づけらしい。瀬戸氏の著書はなんといっても、神学論上の実にアクロバティックな論理を読み解きながら、同時に時代背景としての政治史にも目配せするという、なんとも奥行きのある議論が特徴的。同書でもその持ち味はいかんなく発揮されていて、すでにこれまで以上の読み応え。世間的にはシルバーウィークだそうだが、これはその間で楽しめそうな感じ。