「異端者の群れ」

積ん読になっていた渡邊昌美『異端者の群れ – カタリ派とアルビジョア十字軍』(八坂書房、2008)を読み始める。これ、もとは1969年に刊行されたものだとか。ほぼ40年経っての再版とは、なんとも幸福な書籍だし、こちら読者にとっても僥倖。八坂書店のこうした再版シリーズ(とは銘打っていないが)はとてもありがたい企画だ。今後ともぜひ続けてほしいところ。副題にあるように、カタリ派やアルビジョア十字軍の概要を、幅広い文化的コンテキストから捉えようとする好著。とくに冒頭の三分の一くらいまでは、オクシタニア全般の文化的諸事情を俯瞰する内容で、見事な整理手腕。12世紀ごろの南仏というのも、文化的にも地政学的にもなかなか興味深い。一面では北仏に経済的に遅れた後進地域ではあったのかもしれないけれど、それにしてはトゥルバドゥールなどの宮廷恋愛詩とか、文化的にはある種の異文化混淆でもってとても豊かだったりし、そのあたりの溝というかギャップというかはどう整理されるのか、というあたりがやはり注目点か。まだ途中までしか読んでいないけれど、どうやらカタリ派や同時代の一連の異端派に、それらの溝を架橋する動きのようなものを見て取れるかもしれない、という印象を強く抱かせる。