昨日のエントリの『考える人』春号は、人気の内田樹氏がなにやら大活躍していて、特集にレヴィナス関連で寄稿しているほか、対談も二本。そのうちの一本がこれまた人気の福岡伸一氏とのもの。フェルメールの絵を枕に(そのうちの一枚に、初期の顕微鏡を作ったレーウェンフックという人がモデルになったのではないかという絵があるのだそうだ)、動的平衡の話とかにからめて経済の話に突入していくというある種ハイブロウな(?)対談。ここで内田氏が、経済というものは貨幣とか商品価値とかではなく、ただ「グルグル回す」だけのシステムなのでは、と放言し、これに福岡氏が、生命が行っているのも同じ事、と掛け合っている。そういえば経済がカオス的・複雑系だというのは、ちょうど最近まで移動中読書として読んでいた、高安秀樹『経済物理学(エコノフィジックス)の発見』(光文社新書、2004)にも論じられていたので、個人的にはちょっとタイムリーな感じだ。この本、複雑系の理論を経済に応用するという研究をわかりやすく紹介するというもので(というか、フラクタル理論そのものが経済の研究から生まれたという話なのだそうで)、具体的な事例に則してとても興味深い話が展開している。ま、巻末のある種の理想論の提言などはさしあたり置いておくとして、従来の経済学とは違うアプローチがありうることや、今後のさらなる発展が見込まれることだけは強く印象に残った。門外漢ながら、経済学のような分野にも近年、旧来とは違う学問的刷新の風が吹いていたのだなあというのが、なにやら新鮮だったり(笑)。オッカムとかが中世哲学にもたらした革新のインパクトくらいあるんじゃないかしらなんて空想したりとか(笑)。