トン・コープマンの新譜を聴くのではなく、著書を読む(笑)。『トン・コープマンのバロック音楽講義』(風間芳之訳、音楽之友社、2010)。てっきりもっとエッセイ本のようなものかと思ったら、小著ながらかなりハイブラウな一冊。これはもう、トン・コープマンによる「原典講読の勧め」というところ。当時の記譜や演奏習慣を再現・再構築するためには、周辺情報も含めた広範な文献に目を通さなくてはいけないということで、とくに装飾や即興演奏、アーティキュレーション、テンポなどそれぞれの項目について、最初に読むべきとされる当時の文献が紹介されていく。そう、奏者もそれなりに博学でないと、という話(これって、ある意味当然なのだけれど)。素人のしょぼいリュート弾きですらも、ある程度は原典のタブラチュアを見、当時の音楽論の書を読み、時代全体に関心を寄せる必要がある、と最近とみに思う次第。去る日曜には毎年恒例のリュート講習会もあったのだけれど、やはり理論とか考えなしにだらだらと弾いていてはいけないなあと自戒する(って、だらだら弾くのだってそれなりに難しいのだけれど……苦笑)。