占星術反駁の歴史

念願の、金森修編『科学思想史』(勁草書房、2010)を眺め始める。……とはいっても、相変わらずあまり時間が取れないので、さしあたり個人的に最も関心のある第七章「中世における占星術批判の系譜」(山内志朗)にざっと目を通しただけ。大筋は、占星術の成立からアウグスティヌスによる批判、アラビア世界での勃興、トマス・アクィナスの批判、ニコル・オレームの批判を順次取り上げ、ポイントをまとめているという構成。アウグスティヌスやトマスの批判が、占星術の内的な整合性の批判ではなく、ある程度その術的立場を認めつつ、個人の命運などには適用できないという「外在的批判」なのに対して、オレームにいたってようやく内在的批判が一部見られるようになるというのが全体的な流れだ。これは占星術批判をめぐる総論のような感じ。

うん、13世紀ごろは確かに占星術はある程度受容されていたようで、メルマガのほうで取り上げたエギディウス・ロマヌスの『子宮内の人体形成について』(“Aegidii Romani Opera Omnia II.13 – De formatione humani corporis in utero”, ed. Romana Martorelli Vico, Sismel-Edizioni Galluzzo, 2008)などを見ても、星辰は魂には影響しないものの、自然に属する身体には何らかの傾向をもたらすという見解が、ほとんど通説であるかのように記されている。上の山内論文からも漠然と読み取れるけれど、トマスはもちろんオレームなどでもそうした影響関係は認められているような感じで、そうした身体面への星辰の影響というのは、中世の占星術批判からはこぼれ落ちているように思われる。で、個人的にもちょっと調べてみたいと思っている医療占星術などは、まさにそうした批判対象外の術的思想に立脚しているはず。それすら批判されるようになるようなことはなかったのか、あったとしたらいつごろ、どのようにして始まったのか、などなど、このあたりの興味は尽きない(笑)。