エックハルトというとどうしても上田閑照氏の研究などが思い浮かんでしまうが(笑)、それとはまた違う視点からの研究も出てきているらしい。というわけで、松田美佳『マイスター・エックハルトの生の説教』(行路社、2010)を眺めているところ。まだ全体の3分の1ほどの、いわば「さわり」を読んだところ。エックハルトの存在概念や目的論などについて、トマスとの比較で浮かび上がらせている。なるほど、エックハルトが師匠の議論をいかに「拡張」しているかというあたりがなかなかに新鮮かも。珍しく博論をあまりリライトしていない印象の文章なのだけれど、案外こういう議論にはこうした形式が合っているのかもなあ、ということをちょっと思った。うん、ジャン・ベダールの小説(人間臭いエックハルトが描かれていた)を抜きにしても、エックハルト像というものもさらに刷新されていってほしいところ。いずれにせよ、後半はエックハルトの倫理論(これもトマスとの対照で語られていくみたいだ)に入っていくということで、これまた楽しみではある。個人的には秋に出る教材がやっと校了したので、晴れて本腰を入れていろいろ積ん読とか見ていきたいと思っているところ(笑)。