ステンドグラス修復小史?

ちょっといつもとは違う分野の論文を眺めてみる。ゴットフリート・フレンツェル「中世ステンドグラスの修復」(Gottfried Frenzel, ‘The Restoration of Medieval Stained Glass’, Scientific American, Supplement: Science and the Arts (1995))。ステンドグラスの修復プロジェクトを率いている修復師のレポートらしい。個人的には興味はあるものの、あまり馴染みのない分野だけに、なかなか斬新で面白い(笑)。ヨーロッパ各地の教会のステンドグラスが、大気汚染などの脅威に晒されている実情とか、融点の違いでできあがったグラスの耐性が異なるとか(ゴシック期よりもロマネスク期のほうのものが持ちがいいのだとか。一番優れているのはやはりルネサンス期)、シャルトル大聖堂の青色(ロマネスク期から初期ゴシック期)はほかの色に比べて耐性が高いとか、さらには19世紀ごろからの修復手法がかえって損壊を進めたといった話とか。近代以降、中世の遺物は顧みられず、19世紀になって見直しが始まったものの、かつての技術的な伝統はとうに失われていて、やっと20世紀になって試行錯誤が始まったという「修復小史」がとりわけ興味深い。このあたり、古楽などの復興とかとまったくパラレルな展開を見せているのだなあ、と。また修復技術が比較的短い期間で大きく進展しているあたりのことも見逃せない。この論文は95年の刊行ということなので、今はさらに違っているのかも。最新情報とかも探してみたいところ。

↓ソワッソンの教会のステンドグラス(13世紀、仏版wikipediaから