ゾシモス『炉と器具について』第一書 2

2. テオセベイアのゾシモスが常に健勝であらんことを。時にまつわる染色は、婦人よ、『炉について』の書を冷笑へと転じせしめた。というのも多くの人は、各人のダイモンからの厚遇により、時にまつわるもの[染色]において成功しうる立場にありながらも、『炉と器具について』の書をも、あたかも真理ではないかのごとくにあざ笑うからだ。また、各人のダイモンが語らず、時に即して彼らの運命を変え、彼らに害をなすダイモンに代わられるのでもなければ、いかなる論証的なロゴスも、それが真理であると彼らを納得させはしない。彼らの技術も幸運[善きダイモンをもつこと]もすべて遠ざけられ、同じ言葉が不運によっていずれかの方向に曲折すると、やっと彼らは、みずからの運命によって明らかにされて、以前に考えていたこと以上の何かがあると認めるのである。

・「時にまつわる染色」としたκαιρικαὶ καταβαφαίは、仏訳の注によると、βαφαίが染めることを意味し、καταがついていることで「深々と染めること」ではないかという。時間をかけて奥まで染める技法のこと?
・全体的に時の支配が問題にされているような印象の箇所。「言葉」としたῥῆμαは、同じく仏訳注によれば、その染色を行うために術者が用いる処方のことだとされている。これが時宜的な運・不運によって、成功するか失敗するかするということのようなのだが……。