パレオグラフィ

西洋写本学少し前に出た、ベルンハルト・ビショップ『西洋写本学』(佐藤彰一、瀬戸直彦訳、岩波書店)を眺めている。これはいわゆるパレオグラフィ(古文書学)&コディコロジー(写本学)の基本書ということで、論評の対象にするような書籍ではないけれど、とにかく写本の文字の正確な読み取りがいかに大変かということと、それを極めてきた先人たちの不断の努力の尊さなどを改めて想う。ただ同書は値段がちょっと張っているのが玉に瑕で、基本書ならばもっと廉価で出せないものか……とため息も出る。ま、それはともかく(笑)。

同書はもっぱらラテン語が主なのだけれど、ギリシア語などについてもそうした基本を押さえておくのは重要。手書きの写本を解読する上でキーとなるのは、なんといっても隣接する文字同士の融合(合字:ligature)や、一定のパターンについての省略法を知ることだが、そのあたりについて、いくつかWeb上のソースを見て回っているところ。たとえばローマ時代のビザンツのギリシア語表記についてはGreek Letter Combinationsというページがあるし、もっと原文に即した具体例が示されているものとしては、たとえばA Short Tutorial on Greek Paleographyというページなどがある。個人的にとても面白くかつ参考になるオススメは、古典ギリシア語の古文書書体のフォントセットのマニュアルらしいこちらのPDF。Fonts for GREEK PALEOGRAPHYというもの。これの第一部が、時代ごとの書体の特徴をまとめていて興味深い。あと、関連書籍はいろいろありそうだけれど、ネットで観られるEdward Maunde Thompson, An introduction to Greek and Latin Paleography, Clarendon Press, 1912は、ラテン語とギリシア語両方を扱っていて、これまたとても参考になりそうだ。うーむ、でも基本を呑み込んだらあとはやはり実践あるのみ、ですかね。いろいろ写本を見ていくしかないわけだけれど、ネットの時代のありがたみも改めて感じる。なかなか読めないけれども、それはそれで楽しい時間になりそうだ。