ジャン=イヴ・ボリオー編『カルダーノの科学思想』(La Pensée Scientifique De Cardan (L’ane D’or) , dir. Jean-Yves Boriand, Les Belles Lettres, 2012)という論集を読み始めた。カルダーノが関わった学知(魔術、占星術、医学などなど)を網羅するよう、各分野の論考がまとめられている。そんな中、ほかであまり取り上げられない数学に関するものも2編ほど。そのうちの一つ、エヴリーヌ・バルバン「三次の継承:カルダーノ、ヴィエト、デカルト」は、四次方程式(三次方程式はカルダーノの解法が有名だが)について、カルダーノとその少し後の世代であるフランソワ・ヴィエトやデカルトの捉え方の違いを浮彫にしている。というわけで簡単なメモ。ヴィエトはギリシアの幾何学における補助線による処理(立方体を二倍にする、あるいは角を三分割するといった問題について)を、三次・四次の方程式の解に応用できることを示したといい、またデカルトはさらに進んで、幾何学の問題の解法を方程式を解くことに帰着させていた(カルダーノ式の解法)ものの、放物線と円の作図による解法を好んでいたという。これらに対しカルダーノは、四次方程式についてもひたすら幾何学的な表象を追い求めていく(立体の分割問題)。いわば前二者に対して方向性は逆になっている。