噂に違わない短編の名手
イタリアの短編の名手として、名前だけ聞いたことがあったディーノ・ブッツァーティの作品を、邦訳本で読んでみました。『神を見た犬』(関口英子訳、光文社古典新訳文庫、2007)です。現時点ではkindle unlimitedに入ってはいないので、購入したものです。
どれも味わい深い、見事な幻想譚の数々が並んでいます。信仰を皮肉る独特な感覚、ちょっとした日常的な不安から紡ぎ出される奇譚、そして戦争への、やはり皮肉で批判的なまなざしなど。もともとジャーナリスト畑の著者ということで、そのあたりの絶妙な発想はなかなか刺激的です。いいですね、これ。短編の形式は、個人的に嗜好するある種のミニマリズムにもぴったり嵌まります。「戦の歌」「秘密兵器」「戦艦≪死(トート)≫」などの戦争ものなどは、読んでいて、ついつい今現在のウクライナの戦争を思わずにはいられない感じです。