2025年になりました。このブログはいまや牛歩のような歩みですが(苦笑)、今年もよろしくお願いいたします。
……というわけで、本題です。今年の年越し本(読みかけで年をまたいだもの)も色々ありまして、昨年からちびちび読んでいる『百年の孤独』のほか、Loeb版ですが、エピクテトスの『語録』も昨秋から少しずつ眺めています。これ、エピクテトスが語ったことをアリアノスが書き留めたとされる4巻本です。まだ1巻めの末尾あたりをウロウロしています。Loebでも2分冊で、まだ上巻の半分くらいのところですね。
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基本的にストア派の要人だけに、世間的・表面的な事象に喝を入れ、常識的とされる文言をどこかで転覆させようとしているようで、ことのほか日々をぼんやりとやり過ごしている身には、ビシビシと響いてきます(笑)。これもしばらく精読の予定。
さらに年越し本として、ナオミ・オルダーマンの『パワー』(安原和見訳、河出書房新社、2023)を読了しました。『うる星やつら』のラムちゃんじゃないですが、女性たちが電撃を放つことができるようになり、男性優位だった世界が一変していくというSFです。
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群像劇として始まり、政治もの、アクションものになっていく展開が、ある意味とても映画チックです。女性たち同士の繋がりが、世界を転覆しうるかという、思考実験的な作品でもありますね。ちょうど読み始めたアンジェラ・サイニー『家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか』(道本美穂訳、集英社、2024)の冒頭部分に、同性同士の親密なネットワークが、権力を維持する上でのポイントになるのではないかということが示唆されていましたが、この小説世界に描かれるのも、まさにそういう状況です。
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あと、『現代思想』1月号(特集:ロスト・セオリー)もそこそこ面白かったです。個人的にとくに興味深かったのは、古代の視覚論、とくに内送理論と剥離像(エイドラ)を扱った論考(佐藤真理絵)と、金星生命論を取り上げた論考(米田翼)。
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前者では、視覚対象物の「イメージ」が、(それがまとう)聖性とか、あるいはアフォーダンス的なものとか、著者言うところの「ロゴスの余白」として、現代的に再解釈される可能性を示唆しています。後者では、「人類との同質性を前提にした」異星人像をもたらしたのはルキアノスの複数性文学で、「諸世界の住人の同質性の前提」はエピクロスに由来するものだ、と指摘されています。その上で、真の異質性を前提とする学問領域が、代替生化学にもとづく地球外生命論として開かれつつあることが示されています。いやー、これはまた楽しみな領域ですね。こちらが生きているうちに、なにかブレークスルーがあるでしょうか。
いずれにしても、エイドラにせよ、複数性世界にせよ、古代の原子論に端を発するパラダイムに改めて想いを馳せ、その現代的な展開に、大いに期待を寄せる、2025年の年明けでした。(書影はGoogle booksから)