白黒+スタンダードサイズの可能性

白黒で、しかもスタンダードサイズのインディ系映画を2本、wowowオンデマンドで観ました。どちらも間接的ながら移民・難民がテーマになっている作品です。

一つは『Tatami』(2023)。イスラエルの監督(ガイ・ナッティブ)とイラン出身の女優(ザーラ・アミール)の共同監督による、ほぼ史上初の作品なのだとか。トビリシ(ジョージアの首都)で行われた柔道の世界選手権。それに出場したイラン代表の女子選手が、決勝でイスラエルと対戦しそうだとの予想により、棄権するよう自国の当局から脅されてしまいます。家族まで人質に取られてしまうのですね。同じく圧力を受けるコーチ。このコーチ役を、監督も努めたアミールが演じています(『聖地には蜘蛛が巣を張る』の主演の人ですね)。
https://www.imdb.com/title/tt26674818/

この映画、明暗をくっきり出したライティングで、白黒の画面を見事に活用しているように思えました。スタンダードサイズなのも、試合会場などの明るい被写体と、その手前の控えのドアなどの対比などにとてもよくフィットしています。緊張感のあふれる物語を、巧みなライティングと画面構成で見せているようで、サスペンスがいや増す作りです。

もう一つは『フォーチュンクッキー』(2023)。こちらは原題が地名のフリーモントになっています。アフガニスタンから来て、中華料理店向けのフォーチュンクッキーの工場で働く女性が主人公。単調な日々の繰り返しと孤独、そして描かれてはいませんが祖国脱出の壮絶な体験のせいで(?)、慢性の不眠に悩まされている主人公は、フォーチュンクッキーの占いの文章を書く作業を担当するようになります。ところがそこで、自分の電話番号を書いたことで、停滞している生活がにわかに動き出して行きます。
https://www.imdb.com/title/tt8591526/

微妙なユーモアや緩やかな展開のペースなど、初期のジャームッシュの映画のようだ、なんて前評判を聞いていましたが、どちらかというとカウリスマキの映画を彷彿とさせたり。『Tatami』とは対照的に、こちらの白黒画面とスタンダードサイズは、思いっきり人物を真ん中において、変な言い方ですが、観る側に「おいでおいで」をしているような、オープンさを感じさせます(笑)。

昔、シネマテーク・フランセーズがシャイヨ宮にあったころは、スタンダードサイズの白黒作品を壁(スクリーンなわけですが)いっぱいに大写しで写せる設備があり、前のほうの席で観ると、その没入感たるや半端ではありませんでした(iMaxとかが、そのあたりの先祖返りな感じがします)。うん、この作品はそういう感じで、大写しで観たい気がします。それって究極の贅沢という感じですけどね。いずれにしても、白黒やスタンダードサイズも、表現の多様性をもたらしうるという意味で、まだまだ捨てたものではない、ということを改めて感じたのでした。