配信で最近観たうちから、これはいいなあと思ったものを二つほど。一つは『ブラックドッグ』(グアン・フー監督作品、2024)。wowowオンデマンド(なぜか5月31日までになっています)とu-nextで配信中です。
https://www.imdb.com/title/tt28131427/

北京オリンピックが間近に迫っているという文脈の中、ゴビ砂漠の辺境の町では野犬の捕獲が大々的に行われます。そこに参加させられたムショ帰りの青年(エディ・ポン)が主人公。この青年と、群れから離れた黒い野犬(とても精悍な感じの犬です)とが、いつしか親しくなっていくというのが主筋になっています。
全体に引き気味のキャメラがとてもいいです。冒頭、砂漠の道を一台のバスが走っていくと、あたりにわらわらと野犬たちが姿を現し、そのせいかハンドルを切り損なったかのようにバスが横転してしまいます。このあたりのワンショットからして、観る側を惹きつけますね。
話は全体として、主人公が自分の人生で喪失した様々なものを、わずかづつ埋め合わせていくという感じで進んで行きます。再生の物語ですね。まるでキャメラが、少し離れたところで寄り添う感じに佇んでいる感じがしたり、主人公や野犬の、ときに静謐な佇まいと、映画的なギャグ(というか、笑わせどころというか)とが、いい塩梅に散りばめられていたりしていて、映像空間として実に秀逸です。77回のカンヌ映画祭「ある視点」部門で最優秀賞を取ったというのもうなずけます。
もう一つは、Netflixで配信されている『トレイン・ドリームズ』(クリント・ベントリー監督作品、2025)。舞台は20世紀初頭のアメリカ。森林伐採や鉄道敷設に従事する季節労働者の一生を、ジョエル・エジャトンが見事に演じています。
https://www.imdb.com/title/tt29768334/

こちらの作品もまた、喪失の重圧を静かに受け入れ、乗り越えようとする話になっています。ただこちらは、大きな悲劇に心を砕かれる様があまりに痛々しく、主人公はひたすら長い時間をかけて、自分がなしてきたことの後悔や悲しみを受け入れていくほかありません。重苦しい展開ですが、それでも友人に救われたり、娘の姿を投影した若い女性を助けたりと、いろいろなエピソードが散りばめられて、大自然の中で再び自分を見出していくという讃歌になっています。