カナダの哲学者ジョセフ・ヒースによる、『啓蒙思想2.0』(栗原百代訳、ハヤカワ文庫NF、2022)を読み始めたところです。昔とはちがって、感情よりも下位に貶められている理性を巡って、その立て直しに向けた考察を展開しようという本のようですね。
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これの冒頭に出てくる「結婚問題」という論理的思考力を見るクイズが面白かったので、メモっておきましょう。「ビルはナンシーを見ていて、ナンシーはグレッグを見ている。ビルは結婚していて、グレッグは結婚していない。このとき、結婚している人が結婚していない人を見ている」は正しいか? A:正しい、B:正しくない、C:どちらとも決められない」。
著者も言うように、ナンシーが結婚しているかどうかは言及されていないので、ちょっと目にはCかなと思ってしまいますが、これは不正解(私もご多分にもれず、そうでした(苦笑))。正解はAなんですね。今問題になっているのは、「結婚している人が結婚していない人を見る」という文の是非であって、「誰が」が問われてはいません。ナンシーも、結婚しているか、していないかの二つに一つなのは間違いなく、結婚しているのであれば、ナンシーがグレッグを見ているので、問題の文は正しいですし、結婚していないのであれば、ビルがナンシーを見ているので、この場合でも問題の文は正しいことになる、というわけです。うーん、やられましたね。
著者はこの例を、合理的な観点からは明白だが、直感的ではないために初見では間違いやすいと指摘しています。合理と直感とが別々の種類の認知プロセスだ、ということを示すために出している例ですが、著者はここで、時間のかかる面倒な合理的判断の重要性へと、話をもっていこうとしています。というわけで、しばらくそうした合理についての考察に、付き合うことになりそうです。

