世界システム論も面白い

前回の投稿で取り上げたピーター・ターチンの本に触発されて、世界システム論についても少し見てみたくなりました。で、積読の中から、岩波の『思想』2024年4月号(1200号:特集「危機の世紀」)を引っ張り出して読んでいるところです。この中の、諫早庸一「「14世紀の危機」の語り方」がなかなかすごいですね。
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西欧史中心のウォーラー・ステインに対して、ジャネット・アブ―=ルゴドが唱えた脱西欧中心化した(中東から中国までを捉えた)世界システム論。ただそれは13世紀までの話。アブ―=ルゴドは、14世紀(とくに後半)にはそのシステムが衰退・崩壊の危機を迎えると言い、きっかけとなったのはモンゴルによる中央ユーラシアの統合と、その後の黒死病のパンデミックだったとしているのだとか。これに対して、諫早氏はその説の検証を批判的に進めて行きます。

で、この論考は、黒死病の広がり(ビッグバン)が生じたのは14世紀初頭の限られた期間であり、時期的なズレから、パンデミックがシステム崩壊の原因とは言えないと断っています。さらに、たとえばイブン・バットゥータが『大旅行記』で報告したような国際交易路の活況も、14世紀初頭までの話であって、中期の状況ではなかったとしています。では、何が13世紀までの世界的なシステムの崩壊を招いたのか。論考は、それはモンゴル帝国の解体(コアをなしていた「移動」の寸断と政体の小規模化)だと指摘します。なんと、帝国による統合ではなく、帝国の解体・衰退が主因だというのですね。

なんだかこれ、実証はなかなか無理でも、推論として、ターチンの議論と組み合わせて考えてみたいところです。解体とか崩壊とかの言い方についても、ユルゲン・パウルの言い方を紹介し、「次第に消えていく」ぐらいがいいところだろうと指摘していますね。歴史研究の示唆するところは、今更ながらとても興味深いですねえ。私たちの文明も、小説などに描かれるように一気に崩壊してディストピアになるのではなく、ゆるやかに衰退して徐々に消えていく、みたいになるのかもしれません。